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腰椎すべり症とは?
腰椎すべり症は、別名脊椎すべり症とも呼ばれ、背骨の変形から痛みなどが生じる病気のことです。腰椎すべり症には、大きく分けて2つの種類があります。1つは、主にスポーツによって大きな負荷がかかることにより、背骨を構成するパーツが疲労骨折を起こす「分離すべり症」です。もう一つは、主に加齢に伴い背骨を構成するパーツが変形し、痛みや排尿障害などを引き起こす「変性すべり症」です。 分離すべり症は、体を仰け反らせたり、体を旋回する、背骨のパーツが分離し、分離した部分が更に乖離することで痛みを生じます。部活動やスポーツ競技の選手が、日々の練習や試合を経て、腰部に何度も負荷がかかることで分離が生じます。ただし、分離しただけでは、大きな痛みなどを伴わない場合が多く、分離した部分の軽い痛みを自覚する場合がありますが日常生活に支障がない場合がほとんどです。分離症が、回復しないまま更に骨がどんどん離れてしまうことで、分離すべり症に移行します。 変性すべり症は、分離の状態を経ずに、背骨の中心となるパーツが前側に反った状態になります。背骨の中心は、太いホースのようになっていて、中に神経などの細いホースのような管がたくさん張り巡らされています。太いホースが湾曲することで、中を通っている細いホースが圧迫されてしまいます。細いホースが圧迫されるということは、血流や膀胱を制御する神経に圧力がかかります。そのため、血行障害や排尿障害の症状が出やすくなるのです。腰椎すべり症の症状は?
腰椎すべり症は、背骨を構成する太いホースのようなパーツと、そこに飛び石のようにくっついている小さな骨たちの位置のバランスが崩れることで生じる病気です。太いホースを支えている骨が疲労骨折で分離したり、太いホースが不自然に湾曲することで、神経や血管が圧迫されます。下半身の機能に関係している血液・神経などが阻害され、腰痛だけでなく排尿機能の乱れや下半身の機能低下につながります。腰痛
腰痛は、腰椎すべり症の前段階である分離症でも感じる可能性があります。腰痛の初期症状としては、座位・立位のときに軽微な痛みを感じます。慢性的な鈍痛を覚えることもあります。 症状が進行すると、腰を「伸ばす」「反らす」「曲げる」「ひねる」など腰を直接動かす動作によって痛みを感じやすくなります。また、それ以外にも「重いものを持ち上げる」「運ぶ」など腰に大きな負荷がかかる動作も腰痛の原因になり得るので日常生活に制限がかかることが増えます。腰痛だけでなく、下半身の痛みや痺れにまで症状が広がる可能性も十分考えられます。 重症レベルまで進行すると、生活に支障をきたすほど慢性的に強い痛みを感じるようになります。神経が圧迫されている期間が長引くほど、神経が傷みやすくなるので、回復にかかる時間が増す・回復自体が困難になるなどの深刻なケースも見られます。排尿障害
腰椎すべり症になると、膀胱につながる神経が圧迫され、排尿障害を引き起こす可能性があります。 背骨には、複数の小さな骨とそれをつなぐクッションのようなパーツがつながっていることで、背骨がアコーディオンのように柔軟に動く仕組みになっています。しかし、特に変性すべり症では、椎間板と呼ばれるクッションパーツが、通常の位置よりも前側(お腹側)にせり出しており、せり出した部分が排尿機能を司る神経を圧迫するため、排尿感覚や排尿機能の低下、排尿調節がしにくくなります。具体的には、排尿したいという感覚を生じにくくなったり、尿が出にくくなったり、尿漏れ・尿失禁しやすくなったりします。間欠性跛行(かんけつせいはこう)
間欠性跛行とは、腰椎すべり症によって起こる歩行障害の一種です。間欠性跛行は、大まかに「神経性間欠跛行」「血管性間欠跛行」の2種類に分類されます。神経性の場合は前かがみになると症状が落ち着くのに対し、血管性の場合は立ち止まると症状が落ち着くという違いがあります。いずれも、一度症状が緩和されたあと、またすぐに歩けるようになりますが、歩き出すと痛みが出るという特徴があります。腰椎すべり症の改善方法は?
腰椎すべり症の改善方法について解説します。大きく分けて「保存療法」「手術療法」の2種類があり、手術療法の一つに「腰椎除圧術」があります。保存療法には、手術に頼らない方法全般が含まれます。 画一的な症状改善法が存在するわけではなく、症状の進行レベルや健康状態を含め総合的に判断されます。また、どのくらいの期間で改善されるかも、症状の進行レベルや健康状態によって異なります。症状が比較的軽い場合は、まず初めに保存療法が選択されることが多く、保存療法での改善が見込めない場合に手術療法が選択されます。保存療法
保存療法は、手術以外のやり方で症状の改善を目指すいわゆる対症療法のことです。直接的に原因となるものを取り除いて解決するのではなく、自発的治癒力を生かして症状の寛解を目指します。 保存療法には、薬物療法・理学療法・運動療法・心理療法・放射線療法、そしてコルセットなどの装具療法も含まれます。痛みが軽度から中程度の場合、もしくは日常生活に大きな支障がない場合に選択されます。多くの場合、保存療法によって症状の改善が見込めます。手術療法
手術療法は、その名の通り手術をすることで、直接的に症状の原因にアプローチする方法です。保存療法で改善が見込めない場合や神経障害の進行が著しい場合に選択されます。手術療法には、腰椎除圧術と腰椎固定術の2種類があります。腰椎除圧術
腰椎除圧術とは、神経が圧迫されている状態を解除する手術のことです。神経圧迫の原因となる骨を削ったり、神経の通り道を拡充したりする方法をとります。短時間かつ低負荷の手術で、術後の回復が早いという特徴があります。腰椎固定術では、骨の動きに制限をかけて安定させますが、腰椎除圧術では骨が不安定なままのため再発する可能性があります。腰椎すべり症でやってはいけないことは?
腰椎すべり症の方は腰椎が前側にずれているため、この状態を進行させる可能性がある「体を大きく反らせる姿勢」「無理に腰を伸ばす行為」「大きく飛び跳ねる動作」はできる限り控えましょう。また、医療機関で指導されていない自己流のストレッチも症状を悪化させる可能性があるため、腰に大きな負担をかけない範囲で筋力強化や柔軟性向上を目指すことが望ましいです。体を大きく反らせる姿勢
体を大きく反らせる姿勢を繰り返すことは、神経が更に強く圧迫され、痛みやしびれを強める可能性があります。日常生活では、背伸びや高い場所に手を伸ばす動作が該当するので注意しましょう。無理に腰を伸ばす行為
無理に腰を伸ばす行為は、腰椎の安定性を損なうため、痛みの増強や症状の悪化につながることがあるので控えてください。大きく飛び跳ねる動作
大きく飛び跳ねる動作は、ジャンプや着地の瞬間に腰椎に強い衝撃を与えます。骨がずれた部分に強い衝撃を与えると、神経や周囲の筋肉が刺激されやすく、痛みやしびれの悪化につながります。特にバスケットボールやサッカーなどのジャンプを多用するスポーツは控えてください。日常生活においても、階段の昇降や段差の多い場所での大きなジャンプは避け、運動をする場合は腰に負荷がかかりにくい歩行や水中運動などの活動を取り入れることが推奨されます。ヘルニアとすべり症の違いは?
ヘルニアとすべり症は、症状は似ていますが以下の点で異なります。| 項目 | 腰椎椎間板ヘルニア | 腰椎すべり症 |
| 原因 | 腰椎の髄核が外に突出 | 腰椎の椎骨が前にずれる |
| 年齢 | 若年層 | 中高年以降が多い |
| 症状 | 急性の腰痛や坐骨神経痛など | 慢性的な腰痛や間欠性跛行など |
| 発症 | 突然発症することが多い | 徐々に発症することが多い |
| 治療 | 保存療法中心、重症例は手術 | 保存療法中心、症状により除圧術や固定術 |